愛を教えて
すべてはあずさの計画だった。

太一郎が呼んでいると茜を彼の部屋まで行かせたのもあずさだ。


茜を送り出すとき、あずさはこう囁いた。


『太一郎は危険な男よ。部屋に入ったときは必ず、ドアを開けたままにしておきなさい』


最近の太一郎は、万里子にはこれまでのやり方が通らず焦れていた。欲求不満気味、しかもアルコールが入っているとなれば……。

あずさの予想どおり、太一郎はまんまと茜を襲う。

あずさの計画には、雪音が昼の休憩時間にたびたび外出することも予定に入っていた。

誰にも行き先も告げず、ふらっと出る。時間内に戻って来ているのだから、別に問題はないのだ。

しかし、あずさはそれをも利用した。


皐月の用事で出かけようとする六十過ぎの同僚に、尚子の名前を使って『万里子様の部屋にいる雪音を呼んできて』と言いつけた。

案の定、万里子はメイドに皐月の用事を優先するように言い、自ら雪音を探し始める。


あとは簡単だ。


あずさは万里子に伝える―― 『雪音さんなら、よくリネン室で煙草を吸ってますわ』。

リネン室は渡り廊下の横にあった。


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