愛を教えて
そのことを考えると、せっかくのクリスマスなのに気が重い。

万里子が何度目かのため息をついた瞬間、ニットガウンのポケットに入れた携帯がメールの着信を告げた。


「え? どうして?」


万里子が驚くのも無理はない。
そのメロディは卓巳の車が正門を通過したときの音――。


ベンチから立ち上がると、立ち木の間を抜け、万里子は車道側に向かった。遊歩道とほんの十メートルほどしか離れていない。

すると、卓巳の乗るリムジンが万里子の前を走り抜けた。


呆然として見送る万里子。

直後、車は急停止し、そのままバックして万里子の前で止まった。

そして後部座席からは最愛の夫、卓巳が降りて来た。


「どうして? どうして、卓巳さんがここにいるの?」

「どうしてだって? もちろん、それは」


卓巳の言葉を遮るように後部座席のサイドウィンドーが下がっていく。中には宗が乗っており、万里子に軽く会釈した。


「社長。書類は書斎でよろしいですか?」

「ああ。任せる」

「今夜は遅くなりましたので、離れに泊めていただいても構いませんか?」

「ああ――なんでもいいから好きにしろ」


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