愛を教えて
卓巳は宗が邪魔だと言わんばかりだ。

だが、宗は嫌な顔ひとつせず「では、メリークリスマス」そう小さな声で呟き、ニッコリと微笑んだ。

そして、窓が閉まると同時に、車は秘書だけ乗せて走り去ったのである。



卓巳は万里子に歩み寄ると、黒のチェスターコートを脱ぎ、妻の肩にかけた。


「卓巳さんが寒くなるわ」

「じゃあ代わりに、その手の中の物をもらうとしよう」


誕生日プレゼントのセーターと、同じデザインのマフラーだ。

万里子はかじかんだ手で、卓巳の首にそっと巻く。

その手を卓巳が掴んだ。


「いつから外にいる? 氷のようじゃないか」

「じゃあ、温めてくださる?」


万里子は、氷河をも溶かしそうな極上の笑みを見せる。

卓巳はそれをひとり占めするかのように、万里子を抱き寄せ、吐息を重ねた。

冷たいふたつの唇は瞬く間に熱を帯びていった。


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