愛を教えて
最初は怒っているのかと思った。
だが、誤解して怒鳴り散らすならともかく、こんな卓巳の反応はおかしい。

万里子には何があったのか見当もつかず、繰り返し否定することしかできない。


だが、そんな万里子の疑問に、尚子は信じられない答えをくれた。


「あら、太一郎さんは認めましたよ。あなたと関係してしまった、と。卓巳さんに申し訳ないから家を出ると言ってるわ。太一郎さんの真剣な気持ちを踏み躙り、否定するなんて! あの子が可哀相で」


そう叫ぶと、尚子は大袈裟にソファに倒れ込む。
ハンカチで目元を拭うが、涙が見えないのはいつものことだ。


万里子にすれば、それこそ開いた口が塞がらない。

尚子には、散々苛められてきた卓巳である。それが今日に限って叔母の言葉を信じるなんて。


「ま、待って……待ってください。そんなこと何かの間違いです。太一郎さんが、そんな嘘をつかれるはずがありません」


太一郎は万里子に謝ってくれた。そのことは卓巳にも話してあった。

部屋まで行ったことは話していないので、それには少し怒るかもしれない。

でも、ふたりきりになったのはほんの三十分程度。

そこまで考え、万里子は手元の怪文書を見つめた。


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