愛を教えて
太一郎の中で一番古い皐月の記憶は、彼が幼稚園のときのこと。敬老の日に祖父母の絵を描くことになった。
五歳の少年に本当のおばあ様と皐月おばあ様の違いなどわからない。彼は素直に高徳と皐月の絵を描いた。
幼稚園で褒められた絵を、太一郎は張り切って皐月にも見せようとした。
ところが、皐月は絵を見るなりふたつに引き裂き、
『わたくしの孫はひとりだけ。あなたの“おばあ様”ではありません!』
ヒステリックに怒鳴りつけた皐月の顔は今でも忘れられない。
だが、それには皐月のほうにも深い理由があったのだ。
間の悪いことに、その直前、皐月はひとり息子の死を知った。そして卓巳が施設に入れられたことも。卓巳を引き取りたいと言った皐月を夫は無視した。
そんなとき、奇しくもその夫によく似た太一郎に『おばあ様』と呼ばれ……。
その太一郎を可愛いと思えるほど、皐月は人格者ではなかった。
「太一郎さん。今までどこに行っていたのです? 尚子さんはあなたが、万里子さんのことを本気で愛している。この家を出ようと思っている、とおっしゃっていました。本当ですか?」
「そんな訳ないだろ。笑わせんなよ」
太一郎は皐月から目を背け答える。
五歳の少年に本当のおばあ様と皐月おばあ様の違いなどわからない。彼は素直に高徳と皐月の絵を描いた。
幼稚園で褒められた絵を、太一郎は張り切って皐月にも見せようとした。
ところが、皐月は絵を見るなりふたつに引き裂き、
『わたくしの孫はひとりだけ。あなたの“おばあ様”ではありません!』
ヒステリックに怒鳴りつけた皐月の顔は今でも忘れられない。
だが、それには皐月のほうにも深い理由があったのだ。
間の悪いことに、その直前、皐月はひとり息子の死を知った。そして卓巳が施設に入れられたことも。卓巳を引き取りたいと言った皐月を夫は無視した。
そんなとき、奇しくもその夫によく似た太一郎に『おばあ様』と呼ばれ……。
その太一郎を可愛いと思えるほど、皐月は人格者ではなかった。
「太一郎さん。今までどこに行っていたのです? 尚子さんはあなたが、万里子さんのことを本気で愛している。この家を出ようと思っている、とおっしゃっていました。本当ですか?」
「そんな訳ないだろ。笑わせんなよ」
太一郎は皐月から目を背け答える。