愛を教えて
「でもなんだって閉じこもるんだ? さっさと彼女を迎えに行けばいいだろ。明日から新婚旅行だろうが。どうすんだよ」

「卓巳さんは自信がないのでしょう。愛から遠ざかったまま、人生をたったひとりで歩いてこられました。運命に逆らった初めての恋愛に戸惑っているのです」

「たった……ひとり?」

「太一郎さん、卓巳さんの目を覚ませてやってはもらえませんか?」


それは太一郎にとって思いも寄らない皐月の言葉だ。


「な、なんで俺にそんな」

「あなたと卓巳さんは同じだと、万里子さんが言いました。卓巳さんは動けなくなり、あなたは暴走する、と」


万里子の名前を聞き、太一郎は胸が熱くなった。

頭上から斧を振り下ろされる気分だ。

覚悟を決め、万里子の非難を受け止めるつもりで尋ねる。


「俺のこと、なんて言ってた? 許さない、大嘘つきだって……そう言ってたんだろ?」


皐月は薄い笑みを浮かべ、太一郎が予想もしなかった言葉を口にした。


「あなたを傷つけないと約束した。あなたにそれを信じて欲しいから、自分も信じる。そうおっしゃっていましたよ。万里子さんはこの世の中で一番尊くて、そして難しいことを知っています。『人を許す』ということを」


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