愛を教えて
その言葉を聞いたとき、万里子はこなければよかった、と思った。


こんな言葉を聞きたいためにきたんじゃない。


卓巳のため、たとえ寝たきりでも、意識がなかったとしても、一生彼のそばにいて尽くしたい。

そんな覚悟はシャボン玉のように弾け飛ぶ。


「そうそう、レイプされた女なんか誰も嫁にしないって。でも俺だったらさ……人のことは言えないだろ?」


太一郎の辛辣な言葉に、万里子の鼓動は跳ね上がる。

だが、そこに悪意や嘲弄は感じられない。

万里子が太一郎の顔を見たとき、申し訳なさそうに視線を逸らしたのが証拠だ。


ただ、騒ぎに集まって来た使用人たちの中には、不作法にも好奇のまなざしを万里子に向ける者もいた。


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