愛を教えて
「やめろ、太一郎! 本気ならそんな言い方をするな!」


卓巳は声を荒げたが、さっきのように殴りかかることはしない。 


「今更いいカッコすんなよ。あんただって、そんな女がいやで追い出すんだろ? ま、卓巳にも散々ヤラれまくったんだろうけど。その分、俺のことも楽しませてくれよ、な、万里子ちゃん」


太一郎はわざとらしく大声で卓巳を挑発する。

だが、当の卓巳はやけに静かだ。


(こ、こいつ……怒り過ぎて、マジで俺を殺そうとか考えてんじゃねぇよな?)


物騒な予感に、太一郎はこれ以上万里子を槍玉に挙げるのを躊躇した。 

元々、万里子を悪く言うのは嫌なのだ。

皐月や卓巳のため、果ては万里子のためと思えばこそだが、かなりきつい。


そのとき、卓巳は何を考えたのか顔を上げ、よく通る声でハッキリと答えた。


「それはない。万里子はただ一度、お前のような愚か者の犠牲になっただけだ。自ら男に体を開いたことなどない。無垢な女性だ」

「た……くみ、さん?」


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