愛を教えて
「私には女性を抱く能力はない。おばあ様は私を庇ってくれただけだ。私は万里子を抱いてはいない。私たちが夫婦であったことは一度もない。だから……大切にしてやって欲しい。私はこの家の後継者にはふさわしくない人間だ。藤原の名前も会社も……万里子も、太一郎、お前に任せる。よろしく頼む」



すべてを告白すると、卓巳は太一郎に頭を下げた。

あんなに隠し続けた秘密だった。なのに、今の卓巳にはどうでもいいことのように思う。

万里子の名誉を守りたい。彼女のためならなんでもしてやりたい。


万里子を守るために卓巳の選んだ道。


だがそれは、拙いながらも精一杯に築き上げたふたりの愛を、跡形もなく叩き潰してしまう選択だった。



「酷いわ! そんな……夫婦じゃないなんて……あんなに毎晩私のことを。なのに、抱いてない、なんて。あんまりです!」


万里子は人目もはばからず、大声で叫び始めた。

卓巳のほうは、そんな万里子の様子に気圧され、


「いや、一度だって最後までは」


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