愛を教えて
カウントダウンに卓巳は軽く舌打ちした。


(クソッ! なんでこんなに早いんだ)


『ワン……ハッピーニューイヤー!! God Save the Queen(女王陛下万歳)!!』


口々に叫びながら、手にしたシャンパングラスを高く掲げる。


「万里子、僕のそばから離れるな」

「は、はい」


万里子を部屋に引き止めておくべきだった。いや、点滴など引き抜いてすぐに追えばよかった。自分が倒れたりしたばかりに。

卓巳は後悔しきりだ。

パーティの列席者は、口々に『ハッピーニューイヤー』と言いながら、目に留まった片っ端から抱き合い、頬にキスをしている。

男性同士は抱き合うだけでキスしないのが英国のやり方だ。カップルの場合は軽く唇にもキスをする。

ライカーも数人とニューイヤーの挨拶をしながら、万里子に近づいている。

だが、万里子はライカーどころではないようだ。身を竦めるようにして、卓巳の背中をしがみついている。

次の瞬間、卓巳は万里子を抱き締め、右頬に口づけた。


「こうしていれば、すぐに終わる。我慢してくれ」

「……卓巳さん、ありがとう」


言うなり、万里子は卓巳の右頬に軽くキスを返した。


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