愛を教えて
『私が一緒では退屈そうだね』

『いえ、そういう訳では。ただ、私にお話がございましたら、早めにお聞かせ願いたいと思います』

『フーン』


ライカーは万里子の顔をじっと見ていたが、何か気づいたらしい。彼はフッと口角を上げ笑った。


『タクミは戻って来て夫の務めを果たしているようだ』

『それは……どういう意味でしょうか?』


万里子は怪訝そうな声で尋ねる。


ライカーはゆったりとした動作でスコーンを取ると、クロテッドクリームを塗り、万里子のプレートに置いた。


『リッツご自慢のクリームだよ、女性に大人気だ。……ああ、そうだ。髪は下ろしたほうがいい。黒く美しい髪は魅力的だし、キスマークも隠してくれる』 


万里子はハッとして首筋を押さえた。慌ててバレッタを外し、髪を下ろす。

恥ずかしさを隠すため、万里子は目の前にあるトレイに手を伸ばした。アフタヌーンティでは下からいただくのが正式な作法だ。まずは、小さめにカットされたフィンガーサンドイッチを取った。


『タクミはさすがだ。私の挑発をかわして、よく頑張っている』


万里子は一瞬、聞き違いかと思った。


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