愛を教えて
「いいえ、そうじゃないの。卓巳さんが悪いなんて思ってなくて……あの、お風呂に入りますか? バスタブにお湯を張ってきましょうか? たまにはゆっくり寛いだほうが」
「今は君の香りを消したくない。シャワーなら仕事に出る前で充分だ」
言いながら、卓巳は万里子の背中に手を回し、身体をピッタリと添わせてきた。そして、肌に頬を擦りつける。
暗くて見えないが、ザラザラと感じるのは卓巳のひげだろう。
不思議な感触に、くすぐったくて万里子は声を出さずに笑った。
だが、どうやら卓巳も何事かを思い出し、笑っていたようだ。万里子に話しかける声が妙に弾んでいる。
「万里子、ひとつどうしても言ってみたい言葉があるんだ。笑わずに聞いてくれるかな?」
「なんですか?」
「ひょっとしてもう笑ってる?」
「違います、ひげが……卓巳さんの頬とか顎が当たって、ザラザラしてるのが可笑しくて」
卓巳はきょとんとしている。
それの何が可笑しいのかわからないらしい。もちろん、万里子にもわからない。ただ、今はすべてが幸福なのだ。
少し伸びた卓巳の前髪が、キスの度に万里子の瞼に当たる感覚も。至近距離でないとわからない、卓巳の鼻についた眼鏡の跡も。楽しくて、何もかもが嬉しい。
「今は君の香りを消したくない。シャワーなら仕事に出る前で充分だ」
言いながら、卓巳は万里子の背中に手を回し、身体をピッタリと添わせてきた。そして、肌に頬を擦りつける。
暗くて見えないが、ザラザラと感じるのは卓巳のひげだろう。
不思議な感触に、くすぐったくて万里子は声を出さずに笑った。
だが、どうやら卓巳も何事かを思い出し、笑っていたようだ。万里子に話しかける声が妙に弾んでいる。
「万里子、ひとつどうしても言ってみたい言葉があるんだ。笑わずに聞いてくれるかな?」
「なんですか?」
「ひょっとしてもう笑ってる?」
「違います、ひげが……卓巳さんの頬とか顎が当たって、ザラザラしてるのが可笑しくて」
卓巳はきょとんとしている。
それの何が可笑しいのかわからないらしい。もちろん、万里子にもわからない。ただ、今はすべてが幸福なのだ。
少し伸びた卓巳の前髪が、キスの度に万里子の瞼に当たる感覚も。至近距離でないとわからない、卓巳の鼻についた眼鏡の跡も。楽しくて、何もかもが嬉しい。