愛を教えて
その尋常ならざるライカーの行動に、全員が凍りついたように動けない。


「きゃっ! いや、見ないで……いや……いやあっ!」

「万里子っ!」


万里子の悲鳴に卓巳は我に返った。コートを脱ぐと万里子に飛びつき、包み込むように抱き締める。

そのとき、卓巳は目にしてしまった。万里子の身体がボロボロに擦れて傷ついてることを。


「万里子、万里子、もう大丈夫だ。……万里子」


万里子の唇は紫色だった。震える唇から「いや、見ないで」と、その言葉だけを繰り返す。全身がカタカタと震え、目の焦点も合ってはいない。呼びかける卓巳の声に万里子は一切反応しなかった。


卓巳は、ようやくその手に戻った最愛の妻を、至宝を崇めるように丁重に抱き上げた。

そのまま立ち上がり、出口に向かう。

そして部屋を出る寸前、卓巳はライカーを振り返った。


『サー・スティーブン・ライカー。「首を洗って待っていろ」この言葉を忘れるな』


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