愛を教えて
万里子は迷宮の中に閉じ込められていた。

抜け出したい。卓巳の声がするほうに必死で向かい、彼の腕に飛び込んだ瞬間、思い出すのだ。

自分は卓巳を裏切ってしまったのだ、と。


「卓巳さん……許して。ごめんなさい……ごめんなさい。私を許して」


信じればよかった。

引き裂かれて初めて、卓巳の言葉が真実で、心から愛してくれていたのだとわかった。

そうでなければ、迎えになど来なかっただろう。契約書を破ることもない。あれほどまでに侮辱されながら、すでに他の男のものになった妻を、取り戻そうとはしてくれなかったはずだ。

卓巳の言葉は、悪意により誘導されたものだった。

万里子は確かめようともせず、ライカーの好きにすればいい、と身体を投げ出した。


< 764 / 927 >

この作品をシェア

pagetop