愛を教えて
「ごめんなさい……卓巳さん、ごめんなさい」


言葉になるのはそれだけだった。


「万里子、僕は君を苦しめてるのか? 君は……このまま眠り続けるほうが楽かい?」


卓巳の声が耳の裏で聞こえる。万里子は夢と現実の間を漂いながら、後ろから卓巳に抱き締められていた。そう……卓巳は万里子に触れている。

ふいに、万里子の胸は申し訳なさで一杯になる。

ライカーを受け入れた瞬間の記憶はない。だが、あの男の指や唇で触れられた感触はある。


“私は穢れている”


皮膚だけでなく、髪の一本まで、全身に流れる血液さえも毒が染みんでいく。水に浸したスポンジのように、万里子の身体は毒を吸い上げ、やがて朽ちていく感覚に襲われた。

それに、卓巳を巻き込んではいけない。

卓巳が触れているなら、せめて表面だけでも綺麗にしなくては……。


「洗わなきゃ……私は汚れてるの……綺麗にしなきゃ、卓巳さんが」


万里子は夢の中で卓巳を振り払い、シャワールームを探した。だが、強い力がそれを阻む。


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