愛を教えて
「ダメじゃない。もう、待てないし、僕は待つ気もない」

「せめてシャワーを……身体を洗ってくるから」

「万里子、君の身体でそれ以上洗う場所なんかないだろう? 千回で足りないなら、一万回だって僕が君の身体を愛するから……」


卓巳は唇でなく、互いの額をつけたまま、万里子にそう伝えた。

すると、万里子がクスクスと笑い始める。真剣に想いを伝えて、笑われる理由はわからない。だが、笑顔の万里子が見られるなら、理由などどうでもいい。


「酷い奥さんだな。僕の本気を笑うなんて。どうやってお仕置きしてやろうか?」


そんな冗談を口にしつつ、卓巳も一緒になって笑った。


「ごめんなさい。でも、一万回も愛してくださるの?」

「ああ、もちろん。男に二言はない」

「でも、毎晩でも……三十年も掛かるわ。そのとき、卓巳さんって六十歳なんだけれど」


夫婦生活を思わせる言葉が恥ずかしかったのか、万里子の頬はほんのり桜色に染まった。


< 774 / 927 >

この作品をシェア

pagetop