愛を教えて
卓巳が動き始めてからは、嵐に巻き込まれたようで、よくわからない。

かすかな痛みすらも心地よく、必死で卓巳に抱きついていた。なんて素晴らしい夜だろう、そう思っていたのに。

どうやら、この部屋に吹き荒れた嵐は、夜ではなく朝、ひょっとすれば昼だったのだろうか?

そんな万里子の疑問に、ようやく小休止といった卓巳が答えをくれた。


「朝だからね……多分。まだ、午前中だとは思うが」


卓巳は万里子の乱れた髪を、一本ずつほぐすように指を通している。

そんな気だるい表情の卓巳は初めてで、言い替えれば、今の卓巳は以前からは想像もできないほどセクシーに思えた。


「それに、窓の外には広いベランダがある。その下はテムズ河だ。光の反射で余計に部屋が明るくなる計算だ、と聞いてる」

「テムズ河?」

「ああ……リッツに戻りたいかい?」

「いいえ。私はあなたと一緒にいられるなら、どこでもいいです」


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