愛を教えて
卓巳は背後から万里子を力一杯抱き締めた。


「そんな可愛いことを言うと……頭から食べたくなる」

「もう食べちゃったくせに――きゃ」


卓巳がふいに耳たぶを噛んだ。もちろん軽く甘噛みしてすぐに放し、「生意気な奥さんはこうだぞ」と掠れるような声で囁く。

吐息と共に、卓巳の声が耳の中で響き、万里子は身体が熱くなる。


「あの……ねえ、卓巳さん。私“さっき”のでわかったことがあるんですけど」

「なんだい?」

「私、サーとは……“こういうこと”はなかったと思うわ」


もちろん万里子は真剣である。

だが卓巳は、何を今更、と言わんばかりの表情だ。


「ああ、婦人科のドクターもそう言ってた。……ライカーもね」

「サーはどうして、私を抱かなかったのかしら? それなのに、抱いたように言ったのかしら?」


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