女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・はい?」
どうなっているのかがハッキリしない内は、うかつな事は話せないと、笑顔で振り返るだけにした。
「守口店長がどうしたんですか?」
福田店長は眉毛をよせて、心配そうな顔で言う。
「今日、10時出勤だったらしいんだけど、来ないのよ。連絡しても繋がらないってあの子がパニくっちゃって・・・」
そりゃあ来ないだろう。警察に指名手配されてるんだから。
福田店長が指差したアルバイトの女の子を見る。
「それで、まだあの子一人なんですか?」
いつもなら、遅番の私が売り場に入る頃には彼女は昼の休憩に出ていた。他の売り場からの応援は来ないのだろうか。いつまでも一人で売り場を回せるはずもないし。
「営業に電話して、どうしたらいいか聞いてるみたいだけど・・・。昼は30分くらいに短縮して貰わなきゃだけど、私が交代してあげようかしら。百貨店から誰か出してくれたらいいのにねえ」
ぶつぶつと福田店長が言う。
周りの店の人もチラチラと見ていた。このデパ地下で、店長が連絡なしで休むなんてこと、今まで一度もなかったに違いない。
とりあえず、私出るわね、と店長が休憩に行ったのを見送って、パソコンを開いた。
12時までに発注を済ませなければならない。
在庫ノートを確認していると、カウンター前に人の気配を感じて振り返った。
「いらっしゃいま・・・せ・・・」
笑顔を作って相手を見、私は言葉を消してしまった。
桑谷さんが立っていた。鮮魚の売り場の格好のままで。