女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


「次に行方不明になった時の参考に」

 ――――――――ははあ!

 私は口の左端だけを上げてにやりと笑った。

「教えません」

「・・・兄弟姉妹はいる?」

「さあ、どうでしょうか」

「一番仲の良い友達は?」

「レズの子で、私狙われてるんですって言ったら信じますか?」

 盛大なため息が彼の口から漏れる。

 謎が多い女に惚れると、こんなに苦労するとは思わなかった、と呟いたのが聞こえた。

 私は彼をじっと見詰めた。コンビニからの明かりで顔に影がのり、桑谷さんがすごく年上に見えた。

「・・・私のことが知りたいんですか?」

 しばらく黙って、それからニッと笑って彼が言う。

「ああ。知りたいね」

「調べなかったんですか?やろうと思えば出来たでしょう」

 別に私は特別な人間ではない。戸籍を調べることなど簡単に出来るはずだし、行方不明になった時に素行調査はされているものと思っていた。

 桑谷さんはひょいと肩をすくめた。

「それじゃあ、面白くないじゃないか」

 ・・・・面白くないって。まあ、彼らしい言葉だけど。


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