女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 彼は私の手を取って、私の部屋に向かって歩きながら言った。

「君のことは段々知っていくんだ。毎日少しずつ。ちょっとずつ俺のものにして、いつか全てを手に入れる」

 きっぱりとした言葉だった。

「・・・それって何年かかります?」

 私は一緒に歩きながら一応と思って聞く。すぐに返事が隣から降って来た。

「うーん。50年仕事かな」

 ・・・わぉ。それは、大変。

 50年後は私、80歳じゃん。


 前を向いてゆっくり歩きながら彼が言った。

「・・・・もうすぐ、俺の誕生日が来るんだ」

「―――――いつ?」

 私をみて、独特の笑顔をする。色んなものを含みまくった笑顔で、彼の黒目はじっと動かず真っ直ぐに私だけを見詰める。観察されている気がした。

「9月10日。その日で34歳になる。そしたら髪を切って、迎えにいくよ」

 手を離して、私は立ち止まった。数歩先に歩いてしまった彼が立ち止まって振り返る。

「呪いを解いて、君を迎えに行く。だから―――――――」

 声が低くなった。

「結婚してくれ」



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