蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜精霊の加護〜‡

火の精霊による葬送は、美しく、次の生への祝福を与えると言われている。
魂を浄め、送る者逹の想いを故人へと届ける最高の葬送の儀だ。
赤い焔の中に時折見える白い浄化の焔が、精霊の焔であることを知らしめている。

「かぁさんっ…うっ…」
「っあんたぁ…ぁぁぁ」
「ごめんねぇ…ごめんねぇぇぇっ」

話を聞き付けた多くの人々が、それぞれ連れてきたのは、年齢も性別も様々だった。
今まで動くことも億劫で、埋葬さえできなかったと言うのに、どこからこれだけの人間が湧いてきたのかと不思議に思う程の人数が集まってきた。

《『もの凄い人数だな…』》
「それは遺体か?
ここに集まった人数か?」
《『どちらもだ。
割合でいけば集まった人数の四分の一か…多いな…』》
「ああ、これだけの人数が死んだとなると、この国は本当に酷い状態のようだな…」
《『あの残虐王と呼ばれたカルナ王の時代よりも酷い…瘴気のせいでもあっただろうが…今の王は、一体どうしたいのだろうな』》
「……」
《『どうした』》
「いや…リュスナにこのまま会わせても良いものかと思ってな…可愛がっていた弟が変貌していたら、さすがにショックだろ」
《『確かに…だが、駄目だと我らが止めたとしても姫は会いに行くのではないか?
現実を受け止める器量は、例え身内相手であっても甘くなることはあるまい。
だからこそ、父王を手にかける事もいとわなかったのだろう』》
「まぁな…。
だが、あいつは…優しいんだ…その上、意外に脆い…今この時も、弟が死なせた様な彼らの死に心を痛めている。
俺は恐れているんだろうな…」
《『亡くす事をか?』》
「あぁ、あいつをまた亡くす事になりはしないかと不安でたまらん…」
《『そう思うのはお主だけではないだろう…』》

森の中に居ても、噂は耳に入っていた。
噂好きの風霊が語っていったものだ。

《蒼の姫が亡くなったっ。
高貴で稀有な姫っ…国の…民の為に立ち上がり、ご自身の命で収められた…っそれなのにッ》
《『何があった…』》
《あの人間共ッ、自分達の為に犠牲になった姫を悪魔呼ばわりして罵ったのよッッ。
何も知ろうとしない愚か者共ッッ。
もう、あの土地に加護は与えないわッッ》

その後も怒り狂った精霊逹が愚痴をこぼしながら暴れていった。

《『ようやく元通りか…』》
「何だ?」
《『精霊だ。
これでこの地も安定しよう』》


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