蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜葬送を〜‡

朝日が辺りを照らす頃、それまで息を潜めていた人々が、何年振りかに瘴気が払われた世界で、言い争う奇妙な三人と一匹を物陰からじっと窺っていた。

目覚めれば、そろそろ埋葬するか、火葬しなければと思いながらも、自身の思い通りにならなくなった体を抱え、家の中で縮こまり、その家族の死を嘆く事も出来ずに、無造作に目の前に横たえていた遺体は、穏やかに眠っているような姿へと変貌していた。
薄暗く、日の光さえも差すことがなくなった外が、今日は白い光に満ちている。
重かった体は嘘のように軽く、ゆっくりと這う様に外へと動いてみる。
そっと覗いた外の世界は、夢ではないかと思う程、美しく輝いていた。
砂埃が立ち、ひび割れの見えていた大地は緑に覆われ、葉も付けなくなった筈の庭の木はこんもりとした緑の頭を付けている。

「…っ…から…っなさいって…」
「おま…っ…だけだろっ」
「…しかに……よね…」
《『……にせ…か』》

風に乗って時たま聞こえてくる声は、遠い日の喧騒を思い出させる。

「反省してますっ。
もういいでしょ、この子逹をそろそろ送ってあげたいですし」
「また何か無茶やる気じゃないだろうな」
「しません。
ちょっとした焔の魔術を使うだけです」
「やる気じゃねぇかっ!」
「だからちょっとしたって言ってるでしょ?!」
「信用できるかッ」
「まぁまぁ、ここは私に任せてちょうだい◎」
「ナーリス?」
「どうする気だ?」
「火葬よ?
ちょっと派手にね☆
リュスナのおかげで、この地にいる精霊逹が帰って来たみたいだからね◎
亡くなった子逹もどうせならちゃんと送ってあげたいでしょ?」
「そう…ですね」
「ね?だから、取り敢えずこの辺りに皆集めましょ。
家の中にも居そうだから、声掛けてきて☆
私は、精霊召喚の準備をするわ◎」

そう話している言葉が耳に入り、家を飛び出した。

「ッ火葬していただけるんですかっ?」

しまったと思った。
これでは聞き耳をたてていた事が丸わかりだ。
その上、まともに目が合った三人は、とても美しかった。
連れている犬さえも、艶やかな毛並みに見惚れそうになるが、それよりもちゃんと確認したかった。

「そうよ◎
ご家族が?」
「はい…両親を…」
「そう…では、あの辺りまで運んで来なさい。
まとめてになってしまうけれど…火霊での葬送だから◎」
「っ…ありがとうございますっ」


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