蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜向かう先は〜‡

唐突に視界が開けたかと思えば、目の前に二人の男が立っていた。

「何…だ…?」

お互い顔を見合わせて状況を整理する。
そうしていれば、自分の手にしっかりと握られている石に気が付いた。

「これは…?」

夢ではなかったのかと一瞬思った。
あの闇の中で答えた事を反芻し、蒼葉の姿を探す。

「っ蒼葉様っ…」
「?蒼葉だと…?
お前、リュスナを知っているのか?」

金髪の見るからに育ちの良さそうな若い男から発せられた言葉に驚く。
見た目と口調が合っていない。

「そちらこそ、蒼葉様をご存知で…?」

何だか気にくわない。
そう思っていれば、そう言えば橋の所で蒼葉と一緒にいたやつだと思い出し、またカチンときた。

「失礼。
あなた方お二人とも、リュスナ姉様とはどのようなご関係です」

黒を基調とした服。
年若いが、王族と知れる気品を感じる男が問いかけてきた。

「わたしは、あの方の側近です」
「俺はあいつの師匠だ」
「「何だと?」」

お互い答え、同時に睨む。

パンっパンっ

しかし、他に何か言う前に、響いてきた手を打つ音に揃って顔を向けた。

「石は無事、手にされたようですね」
「あなたは?」

ゆったりと歩いてくる男は、その優しげな容貌に似合わず、なぜか威圧的な雰囲気を醸し出していた。

「…クロノス様…?」
「っ時の宰相と呼ばれた?」
「てめぇがクロノス・ディル・マルビン…。
過去の国の宰相が、なぜここにいる?
とっくにこんな国から出ていったと思っていたが?」
「ほぅ、相変わらずの様ですね、ラダ・クロスリード…いえ、ラダクス・ルゼ・クライネル」
「ってめェッ」
「確か、そちらはマリス・リ・セイレン。
あの方の弟君…」
「っどうして…」
「そして…柚月春臣、今あちらの世界であの方のお側に居る者…。
しかし、かつての名は…バルト・オークス…っあの方を手に掛けた者ッ」
「ッッ…っ」
「何だとッ?
貴様ッッ」

勢いよく胸ぐらを掴まれ、首を絞められる。

「お止めなさい。
それはあの方の本意ではない」
「ッ…くそっ」
「わたくしが今ここに来たのは、あなた方を争わせる為ではありません。
あの方の助けになる為です」
「姉様が今何処にいらっしゃるのかあなたははご存知なのですか?」
「ええ、ですから行きましょう。
石は持っていますね。
ついてきなさい」

ローブを翻し、颯爽と背を向けた男は、迷わず扉へと歩いていく。

「っちッ」

不本意そうに後を追う金髪の男に続き、王族が向かう。
状況は掴めないが、行くしかないと覚悟を決め、自分も一歩を踏み出した。



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