蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜魔界の大公〜‡

龍を無事押し戻す事に成功したが、いつまた何が現れるかわからない。

「ナーリス、瘴穴の封印はまだ出来ないのですか?」
「うぅ〜★
あのバカ男共っ…いつになったら来るのかしらぁ★」
《『ふむ、”闇夜の魔女”が大丈夫だと言ったのだ。
いずれ来るのだろう』》
「待ってらんなぁい☆
何かさっきから嫌な予感すんのよ〜★
炎龍が出て来たのよ?
あんなの普通出てこないわ。
ヤバイのが来そう…★」

そうだ。
さっきから目が闇から離せないのは、ただ次を恐れているからではない。
着実に近付いてくる何かを感じているからだ。
嫌な汗が出てくる。
背筋がビリビリとして気持ちが悪い。

「っ…ナーリス…」

感じるのだ。
闇の向こう側に。

「ナーリスッ…」

強い。
強大で邪悪。
魂が震える程の存在。

『うふっ、ふふふっ。
そこにいるのは、”浄化の姫”と”暁の魔女”かしら?
ふふふっ。
美味しそう。
いいわ…やっぱりこちらの世界こそ、わたくしに相応しいわ…』

っドーンッッ

腹の底から衝撃をくらうような威圧感。
地に押さえ付けられたように動けない。

「っ…ッッ」

『うふふっ…。
そんなに固くならないで、大丈夫よ。
優しくするわ…』

嫌だ。
気持ちが悪い。
まるで魂を吸い取られる様な…。
浮遊感を伴った感覚。
来る。
闇の中から、細い腕と足が現れた。

「やっぱり来たわねっ…大公…レイダ・ディル・ザークっ」
「あら。
嬉しいわ、貴女に名を覚えて貰っているなんて。
約六百年ぶりかしら?
ナーリス・セス・ディクス?」
「っそうね、正確には六百二十七年と百五日ぶりよっ」
「ふふっ、良く覚えているのね?
そんなに会いたかった?」
「ッ…ええそうね…っ。
会いたかったわ。
忘れたりしない…っあんたが私の夫を殺した事はッッ」
「っナーリスッッ」

怒りが爆発した様に、闇を背に立つ女に向かって、光の矢が降り注ぐ。

「やぁね。
焦っちゃだめよ。
術が脆くなってる。
ほらね…」

そう言って手をかざすと、光の矢はボロボロと崩れ去った。

「っ…くっ」
「うふふっ。
歓迎してくれたのよね?」

思考が停止したように、痺れて動けない。
格が違いすぎる。

「あら?
”浄化の姫”?
気分でも悪いの?」
「っ…」
「リュスナに手出しはさせないわよっ」
《『姫よ、我の後ろに』》
「なぁに?その可愛らしいワンちゃんは?
欲しいわ。
わたくしが可愛がってあげる。
いらっしゃい?」
《『…む…』》
「デュカ…行っちゃだめ」
「あら?邪魔するの?
いけない子ね、お仕置きしなくちゃ」
「リュスナッ」
「ッお待ちくださいっ」




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