蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜対峙する時〜‡

「ッお待ちくださいっ」

突如背後から響いた声に息をする事も忘れた。

「っ…お前…」

大公が、驚愕の表情を浮かべ、一歩二歩と後退するのを、ナーリスとデュカは信じられない思いで見ていた。

「お久しぶりですね、姉上」
「っおっ…お前ッ…なぜこちらに居るの?」

その声を忘れてはいない。
思い出した記憶が重なるのを感じる。

「わたくしはずっとこちらに居ましたから…。
貴女の元を離れて…。
だからこそ、貴女がこちらの世界に憧れるのも理解できます。
光に満ちた世界。
暖かな陽の光が溢れる世界です…。
ですが、貴女の考えるようには手に入らぬものです。
誰かの手に入れてはならぬものです」
「いいえっ。
わたくしは手に入れてみせる。
わたくしこそがこの世界を手にする事に最も相応しい存在。
全てがわたくしのもの。
そこに居る”暁の魔女”も…美しく光る”浄化の姫”もわたくしの…」
「ッ渡しませんっ。
その方も…っこの世界もッ」
「ッ…?
どうしたの?
お前だって、こちらの世界を欲していたからこそ、こうしてここに居るのではないの?
ちゃんとお前にも領地をあげるわ。
そうよ…わたくしとお前、また仲良くこちらの世界で暮らしましょう?
そう、それが良いわ」
「…貴女は何も分かっていない…。
愛する事も知らない貴女には、何も手に入らないと言う事になぜ気付かないのです。
愛される事を求めているのに、愛する事を知ろうとしない。
だからこそ、貴女は光を求めているのだと、なぜ気付かないのですかっ」
「ッ黙れっ。
わたくしに…っわたくしにそのような事をッ…。
良いわ…お前も喰らって、そしてわたくしは全てを手に入れる」
「そうは、いかないわっ。
〔世界に織り成す縦糸よ。
その意志を持ちて彼の者を捕らえよ〕」
「ッ何っ!?」
「こちらの世界の術じゃぁ後れを取るけど、これならば問題なさそうね」
「何ですって?」
「この術…『アルマンド』の…」
「あら、リュスナ良く知ってるじゃない。
さぁ、帰ってもらうわよ」
「ふふっはははははっ。
ナメるなッ」

光の糸のようなもので拘束されていた大公が、次の瞬間、その糸を強引に引きちぎった。
肌が裂け、血が滴るのもいとわず。

「っまさかっ…」
「うふはははははっ。
”暁の魔女”覚悟なさい。
わたくしを怒らせたらどうなるかっ。
お前も良く見ておきなさいっ。
わたくしに逆らうことがどう言う事かっ。
死んで後悔するがよいッ」

駄目だ。
せっかく会えたのに。
大切な人を失ってしまう。
そんな事は絶対に。

「絶対にさせないっ」


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