蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜お城の庭で〜‡

「ラダ…あんた何やってんの…?」

城の庭。
数日前に初めて見た時には、草さえも枯れ果てた無惨な姿だったと言うのに、リュスナが浄化の歌を歌った途端、土地神の力を借りて草木や花が豪華な『城の庭』に仕立て上げたのだった。
そんな庭で、ゆったりまったりと連日、お茶をしてお喋りに興じているのが、ラダとセリだった。

「何か文句あるのか?」
「大有りよっ。
リュスナ、今夜帰るのよ?
こんなとこであぶらうってないで、誘い文句の一つでも言ってきなさいよッ」
「ダメよぉ、ナーリスちゃん?
ラダはワタシとお話してんだからぁ」
「ッ…セリ…ちょっといらっしゃい…」
「なぁに?」

声の届かない場所まで来ると、その耳を摘まんだ。

「あんたねぇ、これってあの腹黒宰相の差し金でしょっ?
わかってんだからっ」
「あららぁ…だって、ワタシはラダとお話したかったしぃ、宰相殿は、ラダをお姫様に近付けたくないみたいだしぃ…。
利害が一致しちゃったとゆうかぁ…っイタタタタッ引っ張んないでぇっ…」
「信じらんないっ★
アイツ何て策士なのっ?
あっちからついてきたバルトも、中々二人になれないってこぼしてたのよね…」
「だって、あの宰相殿は本気よっ。
気付かれないように牽制してんだもん。
クールな顔してやるわぁ…」
「関心しないっ☆
勿論、リュスナの気持ちは大事よ…けど、レイダの弟なんて許せないッ…★」
「…それって完全に私怨じゃん…。
けど、まぁある意味恐いのは確かよねぇ…。
余裕なくなってるもん。
殆ど普段は表情変わんないのに、お姫様の前でだけは笑ったりすんのよぉ?
カワイクない?
見てるこっちはめっちゃトキメクぅ」
「………」
「やだぁ、トキメかないの?」
「うっ…そりゃぁ…けど、私的には、ラダとくっついてほしいわけ。
一番まともな縁組でしょ☆」
「うぅ〜ん。
だってラダ、鈍いわよ?」
「っ…そうね…だからっ」

ずんずんとラダの方へと向かうい、胸ぐらをひっつかんだ。

「ッ何すんだよっ」
「あんたがバカだからよっ。
今からリュスナの唇でも奪ってらっしゃいッ。
ポッと出のバルトとかっ腹黒宰相に牽制されててどうすんのッ」
「ッ…なっ何言って…っ」
「好きなんでしょうがっ。
枯れてんじゃないわよッ」
「ナーリスっ落ち着いてっ…言葉がハシタナイ…っ」
「うっサイッ。
もうこの際っ、既成事実を作ってしまいなさいっ。
私が許すわッ」
「あんたさっき、お姫様の気持ちが大事だって言ったばっかりじゃないっ」

賑やかな庭に、しばらく誰一人近付かなかったのは、言うまでもない…。


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