蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜家路へ〜‡

「本当に帰っちゃうの?」
「うん。
色々ありがとう、ナーリス」
「今度は、私が会いに行くわ☆」
「うんっ、待ってる」

城の一室。
フェリスとセリ、ナーリスの力で、あちらへの通路をつくった。
ただ、強引につくったので、春臣が鍵を持っていても、夜を待たなくてはならなかった。
そんな深夜近い時間に、ナーリスやラダは勿論、フェリス、マリス、クロノス、セリ、それに、多くの騎士達までもが見送りに来ていた。

「またお会いしましょうね、リュスナ…いえ、蒼葉…」
「リュスナで構いません。
近いうちにまた…フェリス様」
「ええ…快も…」
「はいっ。
シリスが『お身体に気を付けて』って言ってる。
またね、フェリスお母さん。
『お兄様もあまり心配かけないで』だって」
「…わかった…。
リュスナ姉様、次にいらっしゃる時には、国を建て直して、外に出て行った民が戻れる国にしておきます。
有能な宰相も雇いましたので」
「クルス様…マリスとこの国を御願いします…」
「貴女が住みたいと思う国にしますよ」
「「「ッ…っ」」」

普段絶対に見られない極上の微笑みを見せた宰相とリュスナに、集まっていた全員が息をのみ、凍りついた。

「良い雰囲気だしてんじゃないわよ☆
ラダ行きなさいッ」
「っ押すんじゃねぇよっ」
「ラダ…また来ます」
「っ…おう…その…また一番先に…会いに来いよっ…」
「はいっ」
「…これが噂のツンデレ?!
おいしいぃ!
おいしすぎよぉ!」
「セリっ、落ち着きなさいっ」
「ふふふっ、みんな元気で…。
また、必ずっ」

鍵を使った春臣が光の扉を開く。
差し伸べられた手を取り、もう一方の手で快の手を掴み、光の中へ足を踏み出す。

「デュカ」

低く良く通るクロノスの声が背後で響く。
次に振り返れば、光の扉は消え失せ、固い洞窟の地が感じられる。
そして、その消えた扉のあった場所には、大型犬サイズのデュカがお座りをしていた。

「っデュカッ?」
《『ふむ。
マルビン候たっての願いにより、我はこちらで姫と暮らす事になった。
これより先、姫の守護となろう』》
「?マルビン…っクルスッ?」
《『それと快にこれを渡すように言い使った。
受け取られよ』》
「何?これ?
袋?
あっ石が入ってるっ」
《『それをナルスの腕輪に近付けるのだ』》
「?こう?
っウソッくっついたっ」
《『ふむ。
ではマルビン候の言を伝える。
『リュスナの為、夜眠る時は必ず自身の近くに置くように』
以上だ』》
「?わかった」
「…ふぅ、じゃぁ、デュカをみんなに紹介しなきゃね」

どう説明しようか考えなくては…。

「大丈夫です。
私が説明しますから。
それよりも蒼葉様…お帰りなさい」
「…ただいま…」



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