蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
エピローグ
‡〜幸せなら〜‡

久し振りに帰って来た世界は、とっても懐かしい。
暖かくポカポカといい風も吹き、ものすごく気持ちが良い。
広い庭と呼べる場所をキョロキョロと見回していれば、目的のものを大きな木の下に見つけた。

「みぃ〜っけっ。
デュカ〜」

デュカはその声を聞き、のそりと顔を上げた。

《『快か、”シュクダイ”とか言うのはもう良いのか?』》
「うんっ。
自分で分かるとこは、全部できたし。
後は、ねぇちゃんに教えてもらおうと思ったんだけど…」
《『姫は来客中か…』》
「…何か近よりがたかった…葵さんが恐いなんて初めて知った…」
《『温厚そうではあったな…。
心配だったのだろうな…』》
「だね…」

屋敷に着いた深夜、さすがに今から連絡するのはと、日が上ってからの報告になった。
それからいくらもしない内に駆け込んできた葵さんは、そのまま春臣も追い出して、今は蒼葉の部屋へこもってしまった。

《『それで、我に用があったのではないのか?』》
「うん。
この宰相さんからって言ってた石。
シリスは、何かすっごい強い魔法が掛かってるって言ってんだけど…」
《『ふむ。
その石は、マルビン候が”闇夜の魔女”に頼んで、特殊な魔術をかけたものだ』》
「闇夜の魔女…っ」
《『そう怯えるでない。
”闇夜の魔女”は強いが、怖がるような人物ではない』》
「そうなの?
じゃぁ、どんな術が掛かってんの?」
《『マルビン候が言うには…』》


『これには、快くんの中で生きているシリス様を外に出す事ができる術が掛かっています。
夜、眠った快くんの中から思念体になって抜け出し、姫に会えるようにしました。
ただ、霊とは違うので、誰の目にも見えてしまうのが問題ですが…まぁ、良いでしょう。
害はないですし』


《『…と言っていたな…』》
「じゃぁ、シリスが出て来て話ができんの?
ってか、それじゃぁ俺は会えないのか…」
《『そうなるな』》
「へ〜ぇ、つまんねぇ…。
あっシリスがすっげぇよろこんでる。
宰相さんって優しいなぁ。
シリスの事考えてくれてるなんてさっ」
《『む…そ…そうだな…』》



《《『我が行くのは決定なのか…』》》
『ええ。
あなたも、”闇夜の魔女”が住む世界に行きたがっていたでしょう。
姫の護衛にもなりますし…』
《《『この石は、妹姫の為ではなく、姫の為か…』》》
『当然です。
あの方にこれ以上寂しい夜を過ごさせるわけには参りませんから』
《《『う…うむ…』》》


《『マルビン候にとっては、姫が全てのようだ…。
ここまでくると狂気だな…』》
「ん?
何か言った?」
《『いや…。
快も姫が幸せなら良いのだろ?』》
「もちろんっ。
シリスもそう言ってるっ」



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