蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
第一章〜今を生きる〜

眠るまで

‡〜呪われた生〜‡

この世界に生まれたのはこれで五度目。

私には記憶がある。


転生。


私には呪いでしかない輪廻の輪。


私は忘れる事ができない。

印象的な出来事だからではない。
日々起こる全て、他愛もないものまで全てを記憶してしまう。
あの花はいつつけ枯れ落ちたか。
読んだ本の何ページ何行目の文字で名を呼ばれたか。
一日であの人はどんな事を話したか。
そんな細かい所まで記憶してしまう。
だから、自分で忘れても良い情報を整理しなければならない。
いつでも、脳が覚醒した状態を保つから、眠る事さえ簡単にはできない。
眠れたとしても、完全に昏睡するか、過去の見たくもないシーンを夢と言う形で見る事になる。
休まる事を知らない私の頭は、生まれてから七つをまたぐ時に覚醒する。
それまでは、普通の人々と変わらない。
五度転生して五度とものようだ。
そう、このやっかいな頭は、初めの生から、全てを覚えてしまっているのだ。
前世と呼ばれる生の記憶を、今でもリアルに”覚えて”いる。

だから夢を見た。
忘れたくても忘れられない記憶。

最初の私が最期を迎える日の記憶。

その夢を見た日だけは、一日中頭がはっきりとしない。
うつらうつらと夢へと導こうとする。
眠れるのだと思えば、夢を見る事がなければ歓迎するのだが…。
夢を見れば、精神を削られてしまうのだ。

お気に入りの東屋で、夢に入る前までを行き来しながら、今日一日を過ごす。
夜には祖父の誕生会がある。
大きな財閥の会長特有のパーティーだ。
社交の場が苦手な私としては、参加を遠慮したいが、少し前まで病気療養をしていた祖父が久々に顔を出す。
欠席は出来ない。

だからせめて、あの人が探しに来てくれるまで…。


< 2 / 150 >

この作品をシェア

pagetop