蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜笑顔の告白〜‡

シャラ〜ンっ

ひときわ美しく響いたそれが合図だった。
リュスナの舞っていた足下と四方向に蒼く輝く魔法円が浮かび上がる。

〔サラ・ダルス〕

呪文と共に解放された力は、魔法円を光の粒子へと変換し、風となって同心円状に一瞬のうちに広がっていく。
五つの蒼い光の波が大地を這っていく様は、幻想的な光景を作り出した。

《…良い風だ…約束しよう…今しばらくの猶予だ。
次の時節まで…》
「感謝します」

そう晴れやかに微笑む笑顔は、今までにない美しさだった。
先程までのピリピリとした威圧感が一掃され、悪いものがすべて浄化されたような清々しさを感じる。
この地の主は、満足したのか穏やかな眠りに入ったようだ。

〔カナ・レリナス〕

解除の呪文で元の姿に戻ったリュスナは、軽く息をついてこちらへと歩いてきた。

「すごいわ◎
あなたが土地を浄化してる事は知ってたけど、初めて見た◎◎◎」
《『ふむ。
美しく、繊細な舞だ…素晴らしい》
「ふふ、ありがとう。
とても久しぶりだったから、本当にできるか不安だったけど、上手くいって良かった」
「…っ」
「?ラダ…?どうかしました?」
「っいつからやってた…?」
「?浄化の舞いですか?…確か…初めてラダが旅に出ていった時にクウルに教わったんです。
王宮に一番近い特区の瘴気が酷くて、民達はもちろん、瘴気に弱い弟妹とその母が影響を受けて倒れてしまって…。
ラダの闘舞も舞えるし、浄化の素質もあるから大丈夫と言われて…」

知らなかった。
いや、むしろ闘舞さえも、一・二回見ただけだった。

「言えよッ」
「はぁ…機会がなかったので…」
「もうっ、見苦しいわよっ。
いやぁね、男って変に独占欲が強いんだから」
「っち…っちがッッ」
「何が違うのかしら〜ぁ?
教えて貰えてなかったのが悔しいんでしょ〜☆」
「くッッっ…」

悔しいがその通りだ。
他の誰よりも時間を共有していたはずなのに、肝心な所で傍にいられなかった。
それが運命だと言われればそれまでだ。

「ラダのお蔭ですよ。
闘舞を知らなかったらできなかった事です。
今度、また闘舞を見せてください。
私はラダが舞っている時と、戦っている時が好きです」
「っ…ッッ」
「あら☆
じゃあ、普段は?」
「勿論好きですよ。
そうしている時が一等好きと言うだけで」
「まあ◎」
「っ…」

何て事を言うんだ。
その上、すごくイイ笑顔だ。

「ッッ…っ今度、剣舞を教えてやる…」
「っはいっ」


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