さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「駄目っ!駄目ぇ!!」
あのかんざしだけは絶対に取り戻さないと。
かんざしならいつでも買えると思われるかもしれないけれど、あれは沖田さんにもらった大切な贈り物だから。
逃げる3人を必死に追いかけるけれど、もともと足が速いほうではなかった私はどんどん離されていく。
「あず、戻ってこい!」
後ろから沖田さんの叫ぶ声が聞こえるけれど、前だけを見て走りつづける。
「誰か止めてくださいっ!」
追いつけない。
男達はもう人混みに紛れて見えなくなってしまった。
「行っちゃった・・・。」
ショックで頭がぼーっとする。
返り血を浴びたせいか周りの人達がじろじろと私を見てくる。
「・・・あず?」
人混みの中に、懐かしいその人は立っていた。
まさかこんな所で会えるなんて。
本物だよね?
彼の手には私の鞄が掛かっていた。
彼に会えた嬉しさと、鞄が戻ってきた嬉しさと、どこかほっとした自分がいて、気が抜けたのか今になって涙がこみ上げてきた。