君が隣にいれば (短編)
本田くんはズルイ。

あんなふうに突然、質問しておいて。

私が答えを出したのに、置いて行っちゃうんだもん。

「本田くんのバカ…」

そうつぶやいたとき、

「―――さっきあんなに好き好き言っといて、今度はバカ呼ばわりかよ」

頭の上からそんな声が聞こえて、私はびっくりして顔を上げた。

目の前に立った本田くんは、肩で息をしながら私を見てる。

「何、で…?
晴乃のとこに行ったんじゃないの?」

「うん。
傘渡してきた」

本田くんの息が上がってるのは、走って靴箱に行って、晴乃に傘を渡した後、また走って戻ってきたからってこと?

何で?

だって、晴乃を傘に入れてあげるんじゃないの?

送ってあげるんじゃないの?

「だから俺、傘ないの。
渡辺の傘に入れろよ」

本田くんはそう言いながら、私の傘を指差した。

何で?

本田くんは何言ってるの?

全然分からないよ。

「つーか、渡辺…。
お前もしかして、俺の気持ち、全く伝わってない?」

「気持ち…?」

私は首を傾げる。

「…って何のこと?」

私の言葉に、本田くんはやっぱりか、とうなだれる。

「言っただろ。
俺は雨が好きな変わり者だって」

本田くんはムスッとして言った。

うん。

本田くんが変わり者だってことはよく分かってる。

雨が好きな、変わり者の本田くんに、私は恋をしたんだもん。

「だから…」

本田くんは埒が明かないと思ったのか、立ち上がれずにいた私の前にしゃがみ込むと、

「こういうこと」

私の髪に手を差し込んで顔を寄せると、頬にそっと口づけた。
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