君が隣にいれば (短編)
帰り道。

本田くんに寄り添って歩く。

この間と違うのは、本田くんがさしてるのが私の赤い傘なのと、彼のもう一方の手が私の手を握りしめていること。

「それにしても、遠回し過ぎるんじゃない?」

私は背の高い本田くんを見上げながら言う。

雨が好きだ、なんてセリフ、まさか告白だなんて思わなかったよ。

「それは、渡辺がさんざん自分は雨で、妹は晴れだって繰り返すからだろ。
俺にとっては、一世一代の告白だったのに」

本田くんは拗ねたように言う。

確かに、本田くんは器用そうには見えない。

でも、もうちょっと他に表現があると思うんだけどな。


「だいたい、全然知らなかった。
本田くんがずっと私のこと見てたなんて」

教室から野球部の練習が良く見えるように、グラウンドからも私が見えてたなんて、思いもしなかった。

ぼんやりグラウンドを眺めてるのを見られてたなんて、すごく恥ずかしい。

「こっちは練習でヘトヘトだってのに、渡辺はいつも呑気に外見てるんだもんな。
なんか悔しいっつーか、羨ましいっつーか。
気付いたら渡辺の姿を探すようになってた」

何か、面白いな。

私も部活をやってる本田くんたちが、羨ましかったんだよ。

「渡辺も少しは察しろよな。
この間も俺、もっと一緒にいたいとか、そういうニュアンスのこと言ったぞ」

「そんなこと言った?」

全く記憶のない私に、本田くんはがっくり肩を落としてる。

「せっかく相合い傘してるってのに、渡辺は早く雨止まないかな、なんて言うんだもんな。
デリカシーのかけらもない奴め」

本田くんの口からデリカシーなんて言葉が出て来たもんだから、私はつい吹き出してしまった。
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