星の見えない夜
彼女の得意げな声がする。
「ものは、あるから見えるんじゃない。
見るから見えるんだよ。
星も、私も、愛もそう」
俺は、星空から視線を外し、歯を見せて笑う彼女を見た。
彼女はしょっちゅう俺のまわりにいたはずだが、こうしてちゃんと見るのはずいぶんと久しぶりな気がする。
「たまにはさ、心をからっぽにするといいよ。
そうすれば、外にあるものが見えるから」
彼女は目を弓なりにして、背中で両手を組みながら、知ったふうにそう言った。
「そうか?」
「そうだよ」
彼女が自信たっぷりに答えるので、俺もうなずいてやった。
「そうだな」
彼女は照れたように首を肩へうずめる。
そうして白い手をさしだしてきた。
かじかんだ手でそれをにぎると、ぎゅっとにぎり返してくる。
心をからっぽに。
焦燥感がうすれる。
代わりにやわらかな感触が心臓をみたしていくのが分かった。
たぶん、と俺は思う。
真冬の星探しは、きっとこいつなりの愛だったのだろう。
頭上の闇、その奥で光る星のことを、俺はきっと忘れない。
「ものは、あるから見えるんじゃない。
見るから見えるんだよ。
星も、私も、愛もそう」
俺は、星空から視線を外し、歯を見せて笑う彼女を見た。
彼女はしょっちゅう俺のまわりにいたはずだが、こうしてちゃんと見るのはずいぶんと久しぶりな気がする。
「たまにはさ、心をからっぽにするといいよ。
そうすれば、外にあるものが見えるから」
彼女は目を弓なりにして、背中で両手を組みながら、知ったふうにそう言った。
「そうか?」
「そうだよ」
彼女が自信たっぷりに答えるので、俺もうなずいてやった。
「そうだな」
彼女は照れたように首を肩へうずめる。
そうして白い手をさしだしてきた。
かじかんだ手でそれをにぎると、ぎゅっとにぎり返してくる。
心をからっぽに。
焦燥感がうすれる。
代わりにやわらかな感触が心臓をみたしていくのが分かった。
たぶん、と俺は思う。
真冬の星探しは、きっとこいつなりの愛だったのだろう。
頭上の闇、その奥で光る星のことを、俺はきっと忘れない。


