純情、恋情、にぶんのいち!
ふととーご先輩に視線を戻すと、白団の団席にむかって、ひらひらと手を振ってくれていた。
少しだけ照れくさそうな表情がまた素敵だ。
とーご先輩と同じ団になれたことを、発表されたときは奇跡みたいに思ったし、いまだに少し信じられないでいる。
「あーもうほんとに、ほんっとーに、カッコイイ!」
なにを食べたらあんなにかっこいい男の子に育つのだろう。
こんなばかげたことを本気で考えてしまうくらい麗しい人が、世の中には本当に存在する。
「ミーハー」
放っておいたらこのまま一生クラクラしていそうなわたしに、さーちゃんがぼそりとつぶやいた。
「ちっがうもん!」
これはいたってフツウの感覚だ。
フツウの女子高生はフツウにイケメンが好きだし、たぶん、この団席にいる、いやむこうの団席にいる女子のほとんども、いま、とーご先輩のことを見ているはずだ。
「だからちがうの」
「そうだね。だから、いつまでたってもチィには彼氏ができないんだね」
「それ絶対いま言わなくてもいい!」
さーちゃんだって彼氏いないくせに!
と言いかけて、どんな男の子からの告白も断り続けている彼女と、生まれてこのかた一度も男の子にモテたことのないわたしとでは、立っているそもそもの土俵が違うのだということを思い出したので、反撃するのはやめておいた。