真紅の世界
「は、はじめまして、ダリアさん」
恐る恐る話しかけてみるけど、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向く犬もどき。
ほら、やっぱりダリアさん、私と仲良くする気なんて全くないよ!!
そんなダリアの様子をどうとらえたのか知らないけど、レティは「ダリアは恥ずかしがり屋なの」と微笑む。
恥ずかしがり屋なんじゃなくて、明らかに人を選り好みしてるだけだと思うよ。 とはやっぱり言えなかった。
こんな可愛くて純粋なレティには、そのまま純粋に育ってほしい。
なんて、変な親心が働いてしまうのは、施設にいたチビたちを重ねてしまっているからだろうか。
「見ての通り私も少しなら魔法を使えるけど、お兄様はもっと凄いのよ!」
今日一番キラキラと瞳を輝かせるレティは、ブラコンに違いない。
『レティ、どうして一人でいるんだ。 アレンに怒られるぞ』
そこに突然、初めて聞く声が聞こえた。
辺りを見渡してみたけど、人影は見当たらない。
「だってお勉強なんてつまんないんだもの」
『でも勉強はしなくちゃダメだ。 それに護衛もつけないでいるなんて。だからこんな得体のしれないやつに捕まるんだ。 なんなら俺が食べてやろうか?』
そんなセリフとともにこちらを向いたのは、犬もどきのダリアだった。
「やめて、サラは異世界からきて右も左も分からないのよ」とレティがかばってくれる。
……もしかして、今まで聞こえてきた声は、ダリアの声なのだろうか。
地球では動物がしゃべるなんてありえない。
そんなありえないことが、ここでは当たり前なんだ。
そんな世界に、私は本当にいるんだ。