真紅の世界
「キュイッ」
不思議な感覚に囚われたままでも、その声だけは聞き逃すことはない。
その声を聴いただけで、ハッと頭が冴えわたる。
焦点を合わせれば、目の前に黒い物体……シンクが、大きな目をパチパチとさせながら私を見下ろしていた。
その大きな目は、なんだかクリフの大きな目と似ているような気さえしてくるから不思議だ。
「シンクはクリフとお友達?」
思わず聞いてしまったけれど、シンクは瞬きで教えることもなくただキュイーと力なく鳴いただけだった。
これはクリフの言葉を借りるなら“お答えできません”ということなんだろうか。
思わずため息がでてしまう。
「なんか、クリフといいシンクといい、謎な生き物が多い世界だなぁ」
私の独り言にシンクは“何が謎なの?”と言いたげに「キュイ?」と可愛く鳴いて見せた。
けれど、シンクにさっき質問をはぐらかされてしまったから、そのお返しとばかりに「ナイショ」と笑って見せたら、二つの大きな目を細めて睨むように見下ろされた。
小さな可愛い姿のままなはずなのに、変な威圧感を感じた私は何故か少しの恐怖
を感じてしまう。
でも、そう感じてしまったことに罪悪感に見舞われて、誤魔化すように目の前のシンクをぎゅっと胸に抱きしめた。