真紅の世界


もう、これ確実だ。

完璧に私、異世界トリップしちゃってるんだ。

そんなの小説とかではよくある話だけれど、実際自分の身に起こることだとは思ってもみなかった。

もしかして、そういう小説の作者は異世界トリップ経験者だったりするんだろうか。なんて非現実的なことを非現実的な世界で考えてしまった。



少し話をしていくうちに、金髪少女はレティという名前だということが分かった。

レティが子供だったからというのもあってか。それとも、今自分の置かれているあり得ない状況を、誰かに知ってほしかったのか。そのどちらでもあったのかもしれない。私は、素直に自分のことを話した。

芝生に座って向き合う、ふわふわの白いドレスの金髪少女と一見クマにしか見えない私の、このツーショットは異色だろう。
でもそんなこと、今は考えてる余裕もなかった。


「レティ。……私、この世界の人間じゃない」

「じゃあどこの世界なの?」


私の突飛な発言を訝しむこともなく、あっさりと信じてしまったらしいレティ。
疑うことを知らないのか、それとも私のような前例があるのか。


「地球って言ってね、丸い惑星なんだけどそこの小さな島国の日本ってところにいたの。 なのにね、朝起きたらここにいて」

「それじゃあこの服はその世界の服なのね? サラの世界ではみんなこんな服を着てるのね! ステキ!」


レティは、手をパンっと合わせて瞳をキラキラさせた。
間違いを指摘する気すら起きない私は、ただ、手入れされている芝生をプチプチとちぎった。

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