真紅の世界


「……サラ?」


何の反応もしない私を不思議に思ったのだろう。
レティはさっきまでのはしゃぎようが嘘のように、シュンと眉根を下げて私を見上げてくる。

それが施設にいたチビたちに見えて、思わずレティの小さな身体をぎゅっと抱きしめた。

小さな身体から香るのは、チビたちとは違う花の香り。
外で遊んできた土の匂いも、せっけんの匂いもしない。

でも、その柔らかな子供特有の感触は、チビたちとなんら変わりがなくて余計に悲しくなった。




戻りたい、戻りたい、戻りたい。

毎日うるさいチビたちを、いつもの様に叱っていたい。

生意気な中学生組と、バカみたいに騒ぎ合いたい。

ウメさんの腰をマッサージしてあげながら、くだらない話をしたい。



――……元の世界に戻りたい。



小さなレティの身体を抱きしめながら、私は声を殺して泣いた。

腕の中でどうしたらいいのか分からないでいたレティも、私が泣いていることにきづいたらしい。
でも何も言わずに、私の背中に回せなかった小さな手で、脇腹辺りをポンポンとリズムよく撫でてくれた。
レティのその優しさに、さらに涙があふれた。


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