惑溺
 

だけど……。



心の中のこのモヤモヤした感情を、どうやったら伝えられるのか解らないまま、私は諦めてため息をついた。
そんな私の頭を聡史は優しくなでる。

「由佳、髪の毛伸ばさないとな」

「……え?」

「ウェディングドレス着る時、髪もうちょっと長いほうがいいだろ?」

茶色のシフォンのシュシュでまとめた、私の肩までの髪をなでて優しく微笑んだ。

耳の後ろからハラリと落ちた後れ毛を、なぞるように聡史の指が私の首筋に触れる。
その冷たい指先の感触に思わず体がビクリと震えた。

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