惑溺
私は、聡史と結婚したいのかな……。
一生を共にする人を今選んでしまって、後悔しないのかな……。
こうやってぼんやりしている間にも、どんどん足場が流されていく様で、不安で仕方なかった。
うつむいた視界の端に自分の赤い爪が揺れる。
指先に、熱く汗ばんだ背中に爪を立てた感触が甦る。
聡史の冷たい指先とは正反対の、
あの、熱い体……
「────こんな街中でイチャイチャすんなよ」
その時聞こえてきたその声に、私は耳を疑った。