惑溺
カツ、ヒールがコンクリートを蹴る尖った音をたてて、また彼女が一歩私に近づく。
甘い香りが濃くなった。
「リョウは女の事なんて玩具くらいにしか思ってないよ。
どんだけ尽くしたって無駄だから、さっさと別れなよ」
「私はそんなんじゃ……」
「どうせ強引に誘われるうちにハマっちゃったんでしょ?
親はいない、とか死んだとかテキトーな嘘言ってさ。
女を同情させておいて、こっちが夢中になったらすぐに飽きて冷たくなるんだから」
「私には、小さい頃親に暴力ふるわれてたって言った……」
過去を話した時のリョウを思いながら呟くと、女の子は『ほらね』と、冷たく笑った。
「嘘ばっかり言って女を騙して楽しんでんだよ」