惑溺
 

言葉を無くして立ち尽くす私に彼は

「寒い」

ぽつりと言って、微かに笑った。


「……どうして?」

それ以外、言葉が見つからない。
私の心の中の様々な感情まで全て雪に覆われてしまったように、頭の中が真っ白で何も考えられなかった。

「リョウ、どうして……?」

震える私の声に、リョウはいつもの様に唇を歪めて笑ってみせる。

「偶然通りかかった」

そう言って、また嘘をつく。

< 293 / 507 >

この作品をシェア

pagetop