惑溺
黒い髪の上に積もった雪が溶け、透明な雫になってリョウの前髪からぽたりと落ちるのを、ぼんやりと見ていた。
濡れた黒い髪は艶やかで、ぞっとするくらい美しかった。
真っ白な沈黙を破るように、リョウが小さく白い息を吐き、ゆっくりと左手を持ち上げてその手首からシュシュを外す。
「忘れ物」
そう言って私に差し出した。
「悪い。勝手に借りてたから少し汚れたかも」
差し出されたシュシュを受け取ろうとしない私に、リョウは小さく笑った。
「……いつも、手につけてたの?」