惑溺
 
「じゃあ、お前の失恋祝いに、うんざりするくらい情けないクリスマスイブの話してやるよ」

半分開き直った気持ちで、バックバーの棚を見ながら俺は話し出した。



クリスマスイブにただ会いたい一心で、彼女がここにいるのかどうかも分からないまま、彼女の男の家の前、降りしきる雪の中何時間もガードレールに座っていた。

正直、会えるとは思ってなかった。
会えなくてもいいと思ってた。

ただ、自分でも呆れるくらい情けない事をして、全て諦めて区切りを付けたかっただけかもしれない。


その彼女が出て来たと思ったら、その白い首筋にでっかいキスマークつけて、乱れた服のままで。
たった今男に抱かれたばかりと分かる格好で、待っていた俺を見て泣きそうな顔をした彼女。
彼女の後を追って出てきた男に、何も言えずにそのまま帰った事。
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