惑溺
 
「由佳はアタシの本当に大切な友達だからさ、幸せになってほしいんだ。
だから、いっつもいい男紹介してやってるのにぜんぜんその気になってくれなくて困ってるの」

確かに。
もう27歳で、彼氏も作らずぼんやりしてる私に、博美は煩いくらい男友達を紹介するっていつも言ってくれて、何度か会ったりもしたけど。
わざわざそれを今リョウに言わなくても……。


「いつまでも思い出引きずってないで、さっさと次の男みつけろってリョウくんも言ってやってよ」

「ちょっと、博美……!」


やめてよ、そんな事言われたってリョウが困るだけだよ!

その皮肉めいた言い方に慌てて携帯電話を取り返そうとしたけれど、博美は私の手を払って、ちょっと待ってなさいという様に、人差し指を唇に当てた。

電話の向こうでリョウが何か言ったのが聞こえたけれど、携帯電話から洩れてきた音は微かで、何を言ってるのかはまったくわからなかった。
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