惑溺


違うの。悪いのはリョウじゃない。
三年前、私が逃げてばかりだったから。
憶病で卑怯な私が悪かっただけだから……。


そう言って止めようと博美の左手に触れると、博美は驚くほど優しい顔で私を見て笑った。

大丈夫だからちょっと待ってて、と私に向かって目で合図をする。


「だから、また三年前とおんなじ事を繰り返すんなら、もう二度と由佳に会って欲しくないんだけど」



博美のキツイ言葉に一瞬の沈黙。

そして、電話の向こうのリョウがゆっくりと何かを喋ったのが聞こえた。


「……!」

一体彼は何を言ったんだろう。
リョウの言葉に、博美は少し驚いて顔が赤くなる。

そして、ほっとしたように大きく息を吐いた。

「……分かった。
今タリーズにいるんだけど。うん、そう。じゃあね」
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