惑溺
「あー……!
アタシに言われたんじゃないのに、ドキドキしちゃったー」
電話を切った博美はそう言って、ぬるくなった抹茶ラテを飲みながらパタパタと手で顔を扇ぐ。
「え?ちょっと、何がどうなったの!?」
今の電話じゃ、何が何だか全然わかんないよ。
手渡された自分の携帯電話を受け取りながら博美に詰め寄ると、混乱する私を面白がるように笑った。
「今からここに迎えに来るって、リョウくん。
仕方ないからアタシは大人しく旦那の待つ家に帰るかなぁー」
ふざけたように言いながら、博美はバッグを持って立ち上がる。
え……!ちょっと待ってよ。
「博美!」
さっさと店を出て行こうとする博美を慌てて呼び止めたけど、何を言っていいのかわからなかった。