惑溺
 
「じゃあアタシはリョウくん来る前に退散すっかな」

「あ、ちょっと待って!」

「ん?」


振り向いた博美に、気になっていた事を訊ねた。

「さっき電話でリョウなんて言ってたの?
博美赤くなってたでしょ?」

あの博美の反応が不思議で、どうしても気になった。

「あー…。
まぁ、それは本人に聞いてよ」

心底楽しそうにニヤニヤ笑いながら、博美は手を振る。


意地悪。人の事を面白がって。
教えてくれてもいいのに。


「リョウくんに、今度聡史とふたりでお店遊びに行くって言っといてー」


と笑って手を振りながら、雪の中を聡史の待つ家へと歩いて行く博美。
その姿を私は窓際の席から見送っていた。

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